
ラピスラズリ瑠璃
深い群青色に金色のパイライトが散りばめられたような外観を持ち、古代より「聖なる青」を象徴する特別な石として崇拝されてきた天然石です。強い守護と叡智を象徴し、精神性を高める石としても評価されています。
基本情報
ラピスラズリは産地により青の深さとパイライト・方解石の混ざり方が大きく異なり、特にアフガニスタン産は歴史的・文化的価値も含めて最高級とされます。装飾品としてだけでなく、文明の象徴となるほどの存在感を持つ石です。
- 正式名称
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- 和名
- 瑠璃
- 英名
- Lapis Lazuli
- 別名/流通名
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- 主な産地
- アフガニスタン(バダフシャーン地方) :
- 世界最古のラピスラズリ産地であり、古代エジプトやメソポタミア文明にも供給されていた。濃く深いウルトラマリンブルーでパイライトが微細に均質に入り、最高級品とされる。歴史的価値も高く、古代王侯貴族が使用した装飾品の多くがこの産地である。
- チリ(アウコ地方) :
- 明るめの青で白い方解石が比較的多く混ざる。鮮やかで爽やかな色調になりやすく、工芸品用途として人気が高い。高級品として扱われることは少ないが、大型の原石が採れやすく、装飾用として広く流通する。
- ロシア(バイカル湖周辺) :
- やや暗めの青色が特徴で、均一な青さが出る個体がある。古くからロシア皇族の装飾品に利用され、文化的背景と共に「ロシア産ラピス」として一定のブランド価値がある。
- パキスタン(フンザ・ギルギット地方) :
- アフガニスタン産に近い濃い青色が産出することもあるが、パイライトの入り方に個体差が大きい。良質品はアクセサリー用途として評価されるが、全体的には中級品質として扱われる。
鉱物情報
ラピスラズリは多鉱物からなるため硬度にばらつきがあり、衝撃や水分に弱い性質を持ちます。蛍光性は微弱であるものの、含有鉱物によって光り方が異なる点が特徴です。
- 組成
- 主成分 ラズライト(Na₈–₁₀Al₆Si₆O₂₄S₂–₄)を主体とし、方解石(CaCO₃)、パイライト(FeS₂)などを含む
- 比重
- 2.7〜2.9
- 硬度
- 5
- 結晶系
- 等軸晶系
- 透過性
- 不透明
一般的に不透明であるが、ラズライトの純度が高い部分ではわずかに半透明の青みを帯びることがある。産地によって光の通り方はほとんど変わらない。
- 蛍光性
- 弱い(黄、白)
- 蛍光色
- 黄、白
主成分ラズライトは弱い蛍光を示す場合があり、長波UVで淡い黄白色を発することがある。ただし含有する方解石やパイライトの比率により蛍光の有無は大きく異なる。
- 取り扱いの注意点
- 水に弱い
- 化学薬品に弱い
- 衝撃に弱い
特徴と由来
ラピスラズリは「天空の青」を象徴するような深い色合いを持ち、精神性と叡智を象徴する石とされます。青の均一性とパイライトの配置によって価値が大きく変わります。
- 色
- 青白金
- 外観の特徴
- 深い群青色に金色のパイライトが星屑のように広がる外観が特徴。方解石が多く混ざると青と白のマーブル模様になる。
- 生成環境/形成過程
- 石灰岩が熱変成作用を受けて形成される。ラズライトが主体となり、周囲の鉱物が混ざり合って岩石として固まる。
- 発見/命名の由来
- ラテン語の「lapis(石)」と、アラビア語の「lazward(青)」に由来する。
- チャクラとの関連
- 第6チャクラ(サードアイ/藍・紫)
- 誕生石
- 12月
- 星座石
- 山羊座、射手座
- 干支石
- 該当なし
- 希少性
一般的な品質は流通するが、アフガニスタン産の深い青と均一性を持つ最高品質は極めて希少である。
歴史/伝承
ラピスラズリの歴史は人類文明そのものとともに始まる。メソポタミアでは王宮の装飾品として特別視され、女神イシュタルの象徴として神殿に奉納されていた。深い青は夜空を表し、パイライトの金色は星々を象徴すると信じられていたため、王族は天空の力を身にまとうためにラピスを冠や護符に用いたのである。
古代エジプトではクレオパトラが愛した石として有名で、彼女はラピスを粉末にしてアイシャドウを作り、王権と神性を表したと記録されている。ツタンカーメンの黄金マスクにもラピスラズリがふんだんに装飾されており、冥界での再生と永遠を祈るための聖なる石として利用された。
中世ヨーロッパでは、ラピスラズリは「ウルトラマリン」という最高級の青色顔料の原料となった。修道院の画家たちはマリア像の衣を描く際、この石から抽出される貴重な青を使用した。ウルトラマリンは金よりも高価とされ、芸術家はパトロンから許可を得なければ使えないほど高級な素材であった。ラピスは単なる宝石ではなく信仰・芸術・王権を象徴する聖なる存在だったのである。
さらにイスラム文化圏では、ラピスラズリは悪しきものを遠ざける「守護の青」として広く利用され、細密画(ミニアチュール)やモスク装飾に用いられた。その青は天界を象徴し、人々に調和と精神性をもたらす色と考えられていた。
